「図解表現」入門 日経文庫 I7

飯田英明 著 
日本経済新聞社
830円(税別)
1996年5月発行

「はじめに」より

「図解は実際の仕事になかなか使えない」。そんな声を聞いたことがあります。考えや仕組みを表現する図解に興味を持ち、本を読んだりセミナーに参加した。そうした何とかできると思って、仕事の中で使ったがどうもうまく活用できない」。詳しく聞いてみると社内の会議やお客さんのところに持っていく資料に図解を使うと、どうも相手に違和感があるらしくてけっきょくまた従来の資料に戻ってしまうということでした。

図解は本当に仕事に使えないのだろうか。

図解で表現する利点はものごとをワンシートで視覚的に表現することによりひと目で理解できることです。もう少し具体的に述べると、ひと目見て

  1. 全体がわかる
  2. 個々の要素がわかる
  3. 要素と要素の関係がわかる

という特長があります。これらは文字情報にはないすぐれたものです。

このすぐれた特長を生かすにはワンシートでまとめるだけでは十分ではないのではないか。冒頭にあげた声を聞いて以来そんな疑問を抱えていました。

そうした疑問の答が私の中にある時期から漠然と現れ、やがてはっきりした形をして現れました。図解の特長はそのままわかりやすい資料の特長です。三つの特長を資料の適用すれば、「読んだり説明を聞いて、

  1. 全体像がきちんと浮かぶ
  2. 各段落の内容がわかる
  3. 段落と段落の関係がわかる

資料を作る場合に図解で組立てれば、わかりやすい資料ができる。ビジネスの資料作りにおける図解のワンシート表現は終わりではなく始まりだったのです。まず図解で組立をしてから、それに基づいて資料を作成する。いわば図解は資料を作成するための設計図になるのです。

本書ではこうした考えから、従来の図解表現とは一線を画し、図解で組立をするビジュアル資料についてまとめました。

この本は私が手がけたセミナーの成果をまとめたものです。セミナーの講師を勤めているとさまざまなことがあります。特にコミュニケーションをテーマにすることが多いので、説明自体がわかりやすくなくてはいけないことということに気を使います。実際には自分の伝えたいことがうまく伝わらないこともあります。そんな時には参加者にわかりやすい表現とは何かを教えられます、また参加者の中には私が思いもしなかったような考えを教えていただいた方もいました。百人いれば百人の考え方、理解の仕方があることもセミナーの場でわかりました。セミナーを通して一番教ていただいたのは私自身だと思います。

本書で紹介した方法は、個々の仕事によって異なる点があると思います。考え方をくみとってそれぞれの仕事に適用していただき、少しでもお役にたてば幸いです。